2006年2月15日

日本ではあまり大きく報道されていないと思いますが、デンマークの新聞が載せたムハンマドの風刺画に抗議するデモは、ひどくなる一方です。昨日はテヘランのドイツ大使館と英国大使館が暴徒に襲われました。イスラム世界対欧州の価値観の違いをめぐる、対立に発展しつつあるようです。欧州側は、「言論の自由は絶対にゆずれない」という姿勢を崩していません。

最近ドイツの新聞に、自爆用の爆弾ベルトを身体につけたイラン人のサッカー選手と、ドイツ連邦軍の兵士を描いたイラストが載りました。このイラストを描いたドイツ人の漫画家にも、殺人を予告する脅迫電話が相次いでおり、この漫画家は自宅から姿を消さざるを得なくなりました。仕事で文章だけではなく、イラストも描いている私としましては、「これを描くと殺されるかもしれない」とびくびくしながらイラストを描くのは、真っ平ごめんであり、やはりそうした世の中にしてはいけないと考えています。

ただしドイツや欧州諸国は、ナチスの問題については言論の自由を許していません。「ホロコーストはなかった」という発言は、ドイツなどでは国民扇動の罪というれっきとした法律違反にあたります。イランの大統領が「ムハンマドの風刺画が表現の自由で許されるべきならば、ホロコーストの風刺画を描いたり、ホロコーストがあったかどうかを疑問視したりすることも許されるべきだ」と発言しているのは、欧州諸国にとって痛い所を突いているのです。それにしてもイランの大統領など要人の発言は、だんだんドイツのネオナチのスローガンに近づいており、不気味です。